★Eli and The Thirteenth Confession  /  Laura Nyro  (1968)





ローラ・ニーロは、浅い次元で言えば誰でも聴ける。芯がthickな安定した声、ゴスペルやR&Bのテイストを取り入れたソウルフルなサウンド。 要するに単なるお洒落な音楽として聴いてしまうことも可能だ。
ところで私はロックしか聴かない。そして私の勝手なロックの定義は、無価値に価値を見出す音楽、通常の価値基準の転覆をはかり、怠惰や破滅に価値を与える、有害な音楽だ。
ローラ・ニーロのこのアルバムは、にわかには気づかないかもしれないが、はっきりと有害だと思う。
本来クラッシク以外の音楽は、いや音楽は全て人間に有害 だとされていたのだ。ザ・バンドのガース・ハドソンはいいとこのおぼっちゃんらしいが、彼の家庭ではジャズはevil(邪悪)と言われていたそうで、そう いうことはほんの数十年前までは普通に言われていたことなのだ。
このアルバムは、本来音楽の持つ危険性、ハメルンの笛吹きについて行ってはいけないのだという危機感をはらんでいる。神を、悪魔を、コカインを、ジンを、 ワインを、恋を、子宮で考えているかのような独特のメロディ展開で歌い上げる彼女には、その明るい曲調にも関わらず、 「幸福」や「安寧」といった概念が全く見えない。当然のことで、彼女自身がこの時すでに、笛吹きの吹くままに、音楽という名の海に身を投げてしまっている のだから。

('03,2,1)















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