飛行機


恋は
汚れた天使のように舞い降りる

長い夏の休暇が始まる
ほんのひと月あまりの休暇だが
それは始まりと終わりのつながった環の日々で
もう何年も前から続いている

道路に真昼の幽霊が浮く
四方から機械の立てる音がする
目の前を子供が走り去る
目に見えぬ子供の呼ぶ声がする
傍らに眠るひとが陽炎と消え
この世に存在しない大工仕事の槌のリズムが頭に入り込む
閉じたカーテンが無力にも陽に透かされ蹂躙されている

毎日この時間に頭の上を飛行機が飛ぶ

ゆるゆるとした昼に
衣類を洗い、髪を洗い
こちらのグラスをテーブルに置いて
あちらの本を棚に戻し
人間はやはり、食わねばならない
水物を摂り過ぎれば排泄も増える

カーテンの色が滲む
可哀そうに
私も夕刻になれば
汗の上に紅を塗ってでかけよう
七時に駅前で恋と会う約束がある




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